“Au hasard des lectures”

こんにちは!フランス語講師のブログへようこそ!!

どの国の言葉にも「ことわざ」とまではいかなくともよく使われる「言い回し(定型表現)」というのがありますよね。

フランス語ではそれを “Expression” と言います。今日は “raser gratis(タダで髭を剃る)” というすこし変わった言い回しを説明したいと思います。またフランス語のテキストを読んでいて「これは言い回しかな?」と思うヘンテコな表現に出会ったときの対処法もご紹介しますので、是非参考にして下さい。

 

Anne Hidalgo rase gratis イダルゴ・パリ市長、タダで髭を剃る….わけないですよね。

フランスでは “élections municipales (市議会議員選挙)” が6年に1度開かれます。そして今年がその年です。選挙をほぼ2ヶ月後に控えた先日、保守系マガジン le Point でこんなタイトルを見つけました。

Anne Hidalgo rase gratis. (パリのアンヌ・イダルゴ市長がただで髭を剃る)???

直訳するとそうなりますが、意味としては絶対おかしいですよね。こういう時は、誰しも「何か言い回しが存在するのかな?」と思うでしょう。でも辞書を調べても載っていない。さてどうしましょうか?

私は、グーグル検索しちゃいます。(言語環境をフランス語のままにしています)

そうすると Demain, on rase gratisでたくさん出てきました。いくつかご紹介しましょう。

demain on rase gratis — Wiktionnaire

Demain, on rase gratis ! – dictionnaire des expressions …

Demain, on rase gratis ! : signification et origine de l’expression

どのサイトでも、言い回しの意味もその由来も説明されていますよ。フランス語の勉強が進むと、普通の辞書では全然足りなくなってきて、そろそろ仏仏辞書を買う必要があるかな?と考える方も多いと思います。もちろん、仏仏辞書はとても役に立ちます。でも今はネット上にいろいろ便利なサイトがありますので、まずそれを利用してみてはいかがでしょうか。

 

タダで髭を剃る=守れない約束をする…です。

今日は、expressio.frを参考にしてみましょう。サイトによると”raser gratis”は、” Faire des promesses que l’on ne tient pas”. つまり、守れない約束をするという意味ですね。

由縁の説明もあるのでご紹介しましょう。なんでも、むかしむかしあるずる賢い床屋さんが店の前に”Demain, on rase gratis (明日髭剃り無料)”と大きく張り紙を出したそうな。その張り紙を見たお客さんは当然ながら翌日その床屋さんにやって来て髭を剃ってもらいます。ところが「ああスッキリした、ありがとう」と帰ろうとすると、 ちゃんと料金を請求される。「なんで?」と聞く正直もののお客さんに、床屋の主人は「明日からって書いているだろう」と言う。正直もののお客さん達には、この「明日」は絶対来ないのですよね。と、ちょっと落語のようなおちがある話です。

なので、この”raser gratis”という表現は、「最初からできないとわかっているのにできると嘘をいう」という意味で、話し手の狡さを批判する意味で使われます。

 

Gratuité des transports en commun à Paris(パリ公共交通料金無料)

話をLe Pointの記事に話を戻しましょう。イダルゴ・パリ市長が、いったいどんな出来もしない約束をしたのかといえば、それは「18才以下の若者のパリの公共交通料金の無料化」です。実際にはこの発言は市長自身の発言ではなく、パリ市の第一助役のものでした。第一助役が別の新聞のインタビュー記事で、「市長は公共交通料金の一部無料化を来る市議会議員選挙の公約にするだろう」、と述べたのです。

先ほど紹介したように、Le pointは保守系の週刊誌です。このタイトルはつまり、左派のイ・ダルゴ市長の公約を保守のジャーナリストが批判しているのですね。フランスではよくある光景ですね。もちろん、右派の発言は左派ジャーナリストに叩かれます。市議会議員選挙が近づくにつれ、選挙戦もどんどん激しくなっていくのでしょうね。

 

Il n’y que des imbéciles qui ne changent pas d’avis.(意見を変えないのは馬鹿だけ)

もともと公共交通機関の部分的無償化は共産党議員の要望で、実はイダルゴ市長は当初は反対の立場をとっていました。共産党票を必要とする市長が見解を翻したことに、記者はIl n’y que des imbéciles qui ne changent pas d’avis.(意見を変えないのは馬鹿だけ)と大いに皮肉っています。

ところがです。実はこの話とんでもない後日談があるのです。

1月10日付の le monde では、Anne Hidalgo enterre la gratuité des transports en commun à Paris (イダルゴ市長、パリの公共交通料金無料化を『葬る』 」とあります。つまり、無料化案はボツです。

え?7日に「やります」、10日に「辞めます」というのは、いくらなんでも早すぎませんか?

記者が皮肉に使った”Il n’y a que des imbéciles qui ne changent pas d’avis. (考えを変えないのはバカだけ)”という発言が、今度はイダルゴ市長から聞こえてきそうですね。

 

最後に、この最後の表現について少し付け加えておきます。直訳するととても意地悪に聞こえますが、この表現自体は、ユーモアを交えて皆が和む場面で聞くことの方が多いのです。なので、実際にこの表現に出会っても、「バカにされた!」なんて思わないように気をつけて下さいね。

カテゴリー: フランス語学習