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今日はフランス語を勉強している人は誰でも知っている言葉 “super” についてお話ししたいと思います。あまりにもありふれた言葉といえるかも知れませんが、手持ちの辞書によると”super”が現れたのが68年頃とあります。最初から今のように使われていたわけではありません。

 

Le petit Nicolas プチニコラ

突然ですが、Le petit Nicolasのお話を知っていますか? René Goscinnyが1956から1965年につづった子供向けの物語で、フランスの60年代の設定で書かれています。主人公は小学生の“Le petit Nicolas”で、彼の友達たちとの学校生活や日々の暮らしが愛らしく描かれています。Sempéのイラストも当時の私にはとてもパリっぽく見えて大好きでした。

今では実写版が映画化もされ、アニメ版のLe petit Nicolas をYoutubeで見ることもできます。是非見てみて下さい。私が最初にこの本に出会ったのは、日本の大学を卒業しちょうど留学の準備をしている時で、Folioで読んだのですが、今でも捨てられず持っている思い出の1冊です。

 

Tu n’as pas le droit de dire “super” ! “super”って言っちゃいけません!

さて、なぜここで”Le petit Nicolas”かというと、実は、この話のどこかで、Nicolasが「”super”って言っちゃいけません」と言われているのを読んだのです。”super”は、今でこそ砕けた表現ながら、広く使われている言葉ですが、物語の60年代にはおそらくまだあまりお勧めできる表現ではなかったのでしょうね。

私が読んだのが80年代ですから、設定の60年代とは随分状況が違っているはずなのですが、まだそんなに上手でもないフランス語ながら夢中になってこの本を読んだ私は、「”Super” は使っちゃいけない言葉」と思い込んでしまったのです。なので、フランスで大学に通い始めても、最初は意識してあまり使わないようにしていました。

ところがです。

当時はまさに”super”全盛時代です。本当にどこに行っても聞こえてきます。今でいうと、「やばい」みたいな感じでしょうか、とにかくなんでも”Super”の若者も少なくなかったですね。

“Super”だけで会話が成り立つ時代!

例えば

ー On se voit demain ? (明日会おうか) >   Super ! (OK !)

ー Tien, c’est pour toi. (これ、あげる!) >  Super ! (サンキュー!)

ー On aura une intérro surprise. (抜き打ち試験だって)>  Super! (まじで!)

みたいな感じでした。

それだけ流行っているのに、NicolasのMamanの言いつけを守って”super”を使わないのも変な話なのですが、一度植え付けられた罪悪感というのはなかなか払拭できないものです。

ところがある日文学のテストの答案を返してもらう時、先生を前に「今日は一体何言われるだろう」と緊張していると、先生がいきなり “Super!”とおっしゃったのです。私は思わず”Ah bon ?”と返したのですが、私としては先生のコメントに対する驚きよりも、先生も”super”使うの?という意味の”Ah bon ?”でしたね。こうして罪悪感は一瞬で溶け、みんなと同じように使えるようになりました。

 

はやりは流行 今はもう古い?

というわけで、“super”は一時期とても流行った言葉なのです。もちろん今でも普通に使われていますが、今の若い人たちは、もうすでにこの言葉に少し古臭さを感じるようです。「もう使わないよ」と若い子達が言ってるのを聞きました。

じゃあ、いまどきの彼や彼女達は、「すごくいいね」って言うのに何を使うんでしょうか?

” mortel ” と言うのだそうです。

 

えっ? mortel ?

“mortel”って、la mort(死)の形容詞の「死すべき」とか「致命的」とかいうあの”mortel” ?     ? ???

確かに、Youtube動画やビデオゲームに興じならな “C’est trop mortel!”とか叫んでいる若者達は容易に目に浮かぶけれど、じゃあ、この使い方でこの単語使えるかというと、いやいや私には絶対無理かもしれませんね。

世代間ギャップって、こういうことなのですね。Petit Nicolasのママの気持ちがちょっとわかる気分デス。

“Super”は、68年くらいに使われはじめて、2020年の今、ちょっと古めかしい言葉になり、もしかしたらその衰退期を迎えているのでしょうか?

だとしても、一つの流行語としては例外的に長期間人々に愛されてきた言葉なのではないでしょうか。

言葉って不思議ですね。日本語でもフランス語でも、同じ言葉でも使う人によって、ぴったりだったり、”イタ”かったりしますね。私はこれからも”Super”世代の一員として、若い人相手でも”super” で通して行こうと思います。

因みに、この”イタい”。私だったら”pathétique”っていうかな? でもこれ、あくまでも、”super”世代の感覚ですので。あしからず。

 

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